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AML用語集

    AML(マネー・ローンダリング防止対策)とは?

    マネー・ローンダリングやテロ資金供与の防止対策を行う金融機関を支援する目的で設けられるプログラム。多くの法域では、政府の規制により、銀行、証券業者、マネー・サービス業者等の金融機関に対して、当該プログラムを設けることが要求されている。

    • 書面化された内部ポリシー、内部手続き、内部統制
    • AMLコンプライアンス担当者の任命
    • 継続的な従業員向けの研修
    • プログラムを検証するための独立した審査

    A


    宣誓供述書 (Affidavit)

    裁判所職員、公証人、もしくは権限を持つ者の面前で、宣誓の下作成される供述書。一般的に、捜査令状、逮捕令状、差押令状を請求する際の事実的根拠として使われる。

     

    代替的送金システム (Alternative Remittance System (ARS))

    地下銀行もしくは非公式な価値移転システム(IVTS)。中東、アフリカ、アジア諸国の民族グループとの関連が強く、一般的に、国家間の資金移動を正規の銀行システムの外で行っている。送金業者は、商品販売を営む一般の商店である場合もあり、そのような業者が他国のコルレス業者とアレンジメントを結んでいる。通常、現金の物理的な動きがなく、検証や記録保持に関する形式手続が欠如している。暗号化した情報を、メモ、クーリエ便、手紙、ファックス、電子メール、テキストメッセージ、オンラインチャットシステムなどを通じて送り、続いてその確認を何らかの電信通信で行うことで送金が実行される。

     

    マネー・ローンダリング防止国際データベース (Anti-Money Laundering International Database (AMLID))

    マネー・ローンダリング防止の法律や規制に関する分析の抄録。一般にAML管理措置の2大分野とされる国内法及び国際協力に加え及び国内の連絡先と関係当局についての情報が含まれている。安全で多言語のデータベースであるAMLIDは、法域をまたがる活動に従事する法執行官にとって重要な参照用ツールとなっている。

     

    マネー・ローンダリング防止プログラム (Anti-Money Laundering Program)

    マネー・ローンダリングやテロ資金供与の防止対策を行う金融機関を支援する目的で設けられるプログラム。多くの法域では、政府の規制により、銀行、証券業者、マネー・サービス業者等の金融機関に対して、当該プログラムを設けることが要求されている。マネー・ローンダリング防止プログラムは、少なくとも以下のものを含む。

    1. 書面化された内部ポリシー、内部手続、内部統制
    2. AMLコンプライアンス担当者の任命
    3. 継続的な従業員向け研修そして、
    4. プログラムを検証するための独立した審査

     

    マネー・ローンダリング及びテロ資金供与防止プログラム (Anti-Money Laundering and Counter-Financing of Terrorism Program)

    マネー・ローンダリング防止プログラムを参照

     

    逮捕令状 (Arrest Warrant)

    法執行官に対して、ある特定の人物を逮捕及び拘留し、訴状に対する答弁又は法廷出頭を求める指示を出す裁判所命令。

     

    アジア太平洋マネー・ローンダリング対策グループ(Asia/Pacific Group on Money Laundering (APG))

    アジア太平洋における法域によって構成される金融活動作業部会(FATF)型の地域体。

     

    資産保全 (Asset Protection)

    資産が債権者などから請求される可能性に備えて、資産の保有形態の再編成を行うなど、資産を守るための取り組みを指す。また、資産保全という用語は、他の法域の課税から資産を守るための対策という意味でタックスプランナーに使われることもある。

     

    資産保護信託 (Asset Protection Trusts (APTs))

    特殊な形態の取消不能な信託。通常、オフショアで設立(つまり、委託)され、債権者から財産を保護、保全することを第一の目的とする。資産に対する権原は受託者が任命する人物に移される。一般的に資産保全信託の目的と課税中立性を有し、最終的に受益者保護の機能を果たす。海外受託者にとって、米国の裁判所命令に従うことなく、また信託資産を脅かす訴訟への対応として信託を別の法域に簡単に移すことができるというAPTの利点が強調されることもある。

     

    自動決済システム (Automated Clearing House (ACH))

    大量の入出金取引を、システムのバッチ処理で行うエレクトロニック・バンキング・ネットワーク。ACHのクレジット(入金)決済には、口座振込による給与支払い、請負業者やベンダー企業への支払いなどが含まれる。ACHのデビット(出金)決済には、保険料、住宅ローン、その他の経費などの支出として消費者が行う支払いなどが含まれる。

     

    現金自動預け払い機 (Automated Teller Machine (ATM))

    顧客が、銀行員の支援を受けずに、基本的な取引を完了させることができるエレクトロニック・バンキング窓口。通常、ATMでは、現金の引き出し、小切手や現金による預け入れ、振替、残高照会を行うことができる。

     

    B


    銀行為替手形 (Bank Draft)

    信用度の高い金融機関宛に振り出される国際的にも信用性の高い通貨代替物であり、海外であっても発行金融機関に口座があれば提示次第で現金払いが可能なため、マネー・ローンダリングに悪用されやすい。

     

    銀行秘密 (Bank Secrecy)

    口座の存在自体を含む口座情報を、口座保有者の同意なく銀行が開示することを禁止する国の法律や規制を指す。国境を越えて金融機関やその監督当局に情報が流れることを防ぐ。FATFの「40の勧告」においては、銀行秘密に関する法規制がFATF勧告の履行を決して妨げないよう各国に対して提言している。

     

    銀行秘密法 (Bank Secrecy Act (BSA))

    1970年に制定された米国の最も基本的なマネー・ローンダリング防止法(合衆国法典第31編第5311-5355条)であり、2001年の米国愛国者法により大幅に修正されている。金融機関を始め、その他多くの事業者に対して、様々な金融取引に関する報告及びその記録保管を求めることを含め、マネー・ローンダリング防止に関する各種措置が義務付けられている。

     

    銀行秘密法コンプライアンス・プログラム (Bank Secrecy Act (BSA) Compliance Program)

    銀行秘密法の定義上、米国を拠点とすると考えられる金融機関に対し、マネー・ローンダリングや関連する金融犯罪の規制を目的として、設置及び導入することが求められるプログラム。プログラムには少なくとも、内部ポリシー・内部手続・内部統制の構築、コンプライアンス担当者の任命、継続的な従業員向け研修、プログラムを検証するための独立した監査機能が含まれていなくてはならない。

     

    バーゼル銀行監督委員会(バーゼル委員会) (Basel Committee on Banking Supervision (Basel Committee))

    バーゼル委員会は、健全な監督基準を世界的に推進する目的で、1974年にG-10の中央銀行総裁によって設立されたものである。委員会の委員長は、スイスのバーゼルが本拠地の国際決済銀行によって任命される。これまでに、銀行による顧客管理(CDD)、KYCに係る連結ベースのリスク管理、支払指図の透明性、クロスボーダー電信送金についてのカバー送金電文に関する適正評価及び透明性、テロ資金供与対策を目的とした金融取引記録の法域をまたがった共有など、様々なガイドラインを発表している。www.bis.org/bcbsを参照。

     

    バッチ処理 (Batch Processing)

    データ処理及びデータ伝送の一種で、関連する取引をグループ化して伝送処理するもの。通常、同一コンピューターの同一アプリケーションにより処理される。

     

    無記名式(持参人払式)(Bearer Form)

    証券や株式譲渡などに関する書類が無記名式の場合、その書類に記された投資や預金に対して、その持参人は、売却、譲渡、解約、申込などを、書面による具体的な指示を取得せずとも実行することが可能である。

     

    無記名流通証券 (Bearer Negotiable Instruments)

    無記名式の通貨代替物など。流通証券(小切手、約束手形、マネー・オーダーなど)がその例であり、無記名式(持参人払式)のもの、譲渡制限なしで裏書きされたもの、受取人宛に振り出されたもの、その他引渡しにより所有権が移転するものなどがある。

     

    無記名株式 (Bearer Share)

    無記名株券(記載された個人や組織ではなく、「持参人」を権利者とする株券)の物理的所有者に、その法人内の所有権を認める流通証券。

     

    ベナミ口座 (Benami Account)

    名義人口座とも呼ばれる。ベナミ口座とは、本人に代わり、別の個人や団体が所有する口座で、インド亜大陸のハワラ地下銀行と関連がある。ハワラ・ディーラーを通じて別の法域に送金しようとする場合、ベナミ口座又はベナミ取引を利用することで、自分(送金人)自身の身元や資金の受取人の身元を隠蔽することができる。

     

    真の受益者 (Beneficial Owner)

    「真の受益者」という用語には、文脈により2つの異なる定義がある。

    • 取引が実行されている口座を最終的に所有又は支配する自然人。
    • 法人や法的アレンジメントに対して、かなりの所有権を有し、最終的な実質支配権を行使する自然人。

     

    受益者 (Beneficiary)

    「受益者」という用語には、文脈により2つの異なる定義がある。

    • 電信送金による資金や保険証券の支払金の受け取りなど、なんらかの取引から利益を得る者(自然人又は法人)。
    • 信託という文脈では、すべての信託(慈善信託や法定の非慈善信託を除く)は、受益者を設定しなくてはならないとされている。委託者が受益者になる場合もある。さらに、信託では「存続期間」と呼ばれる最長期限を設定しなくてはならず、通常、100年まで延長可能である。信託では必ず最終的に確認可能な受益者を設定しなくてはならないが、定義上生存していない受益者でもかまわない。

     

    ビル・スタッフィング(紙幣投入)(Bill Stuffing)

    カジノの顧客が、複数のスロットマシーンのビルアクセプター(紙幣識別機)に現金を投入し、形ばかりのゲーム行為を行って清算用チケットを集め、最後にカジノのケージ(出納担当者がいる受付)で現金化したり、小切手発行を依頼したりすること。

     

    闇ペソ交換システム (Black Market Peso Exchange (BMPE))

    「闇ペソ交換システム」(BMPE)とは、貿易を利用した巧妙なマネー・ローンダリングの一例である。BMPEは、コロンビアの為替制限政策に端を発している。コロンビアの事業者は、そのような政策を回避するため、闇市場や金融のパラレルマーケットで取引を行っているペソ・ブローカーと取引することで政府の課税を回避していた。コロンビアの麻薬密売者はこの方法を活用し、米国にある麻薬収益(ドル)の対価として、コロンビアでコロンビア・ペソを受け取っていた。

     

    C


    カード保有者 (Cardholder)

    金融取引用のカードを発行された人物、あるいはそのカードの使用を追加で認められた人物。

     

    カリブ金融活動作業部会 (Caribbean Financial Action Task Force (CFATF))

    金融活動作業部会(FATF)型地域体で、アルーバ、バハマ、英領ヴァージン諸島、ケイマン諸島、ジャマイカなどのカリブ諸国によって構成される。

     

    カサ・デ・カンビオ (Casa de Cambio)

    「両替所」(bureau de change; exchange office)のこと。カサ・デ・カンビオは、外貨両替、少額紙幣の高額紙幣への交換、金融商品(トラベラーズチェック、マネー・オーダー、個人小切手など)の両替、電信送金取引など、マネー・ローンダラーにとって魅力的なサービスを多様に提供している。

     

    主に現金で取引を行う業種 (Cash-Intensive Business)

    提供される商品やサービスに対して、顧客が通常現金で支払う形式の業種を指す(例えばレストラン、宅配ピザ、タクシー会社、コイン式機械、洗車場)。現金ベースの事業の経営や利用を行い、その事業が実際に生み出す現金と不正に得た資金を混同させるマネー・ローンダラーもいる。

     

    現金担保貸付 (Cash Collateralized Loans)

    現金担保貸付とは、現金預金を担保とする貸付である。現金預金は他の法域に存在する場合もある。

     

    現金預金 (Cash Deposits)

    金融機関の1つ又は複数の口座に預けられている通貨の総額。現金預金は、「プレイスメント段階」にあるマネー・ローンダリングに悪用されやすい。犯罪者は、金融機関の口座へ現金を預金することで、その現金を非現金経済の中へ移動させることができるからである。

     

    銀行小切手(自己宛小切手)(Cashier’s Check)

    一般的な通貨代替物であり、その購入はたいてい現金で行われる。金融機関宛に振り出される銀行小切手は、マネー・ローンダリング目的で使用されることもある。

     

    全米麻薬濫用取締委員会 (CICAD (Spanish: Comisión Interamericana para el Control del Abuso de Drogas))

    米州機構の全米麻薬濫用取締委員会を参照。

     

    コレクション口座(集金口座)(Collection Accounts)

    外国移民が、居住先にある1つの口座に少額の現金入金を何度も行い、集められた預金は、その資金の源泉を記録されることなく、母国の口座に送金される。アジアやアフリカのある民族グループには、コレクション口座をマネー・ローンダリングのために利用しているところがある。

     

    嘱託書 (Commission Rogatoire)

    letters rogatoryとも言う。文書による法的又は司法的支援の要請であり、外国法域にある証拠を求めることを目的に、ある国の中央当局が別の国の中央当局に依頼するもの。通常、嘱託書には、要請の種類、要請国の関連する刑事罰、要請を行う法的根拠、求める情報が記載される。

     

    集中口座 (Concentration Account)

    「オムニバス口座」とも呼ばれる。金融機関自身の名義で保有されるクリアリング口座であり、主に内部管理や銀行間取引のために用いられる。その際、オリジネーター(依頼人)は特定されずに、送金や合同運用が行われる。

     

    集中リスク (Concentration Risk)

    集中リスクについては、まず、貸借対照表の資産の部に適用されるリスクがある。一般的に、監督当局は金融機関に対して、与信の集中を特定するための情報システムの構築や、融資先(単体ベース、あるいは関連グループを含めた連結ベース)に対する銀行のエクスポージャーを抑えるため、融資限度額の設定を要求する。負債の部における集中リスクは、資金調達リスクに関連するもので、特に大口預金者による早期、あるいは突然の資金の引き出しリスクは、金融機関の流動性を損なう恐れがある。

     

    機密性、守秘義務 (Confidentiality)

    特定の事実、データ、情報が公開されたり、不正に閲覧されたりしないようにすること。多くの法域で、疑わしい取引や疑わしい活動の届出を提出する場合、守秘義務が求められる。提出元の従業員は、届出が提出されたことを顧客に知らせてはならない。また、それとは別の状況として、金融機関が、その法域における銀行秘密法に反して、法執行機関や国家金融インテリジェンス機関(FIU)に顧客情報を開示すれば、それは守秘義務に違反することになる。

     

    没収 (Confiscation)

    財産没収など、管轄当局や裁判所の命令により、資金やその他の資産が永久的に剥奪されること。没収では、司法もしくは行政上の手続を通じて、特定の資金や資産の所有権が国家に移転される。移転により、没収の時点でその資金や資産の所有権を保有していた者は、没収された資産に対するあらゆる権利を原則的に喪失することになる。

     

    企業事業体  (Corporate Vehicles)

    悪用される可能性のある法人組織のタイプである。例えば、非公開有限責任会社、証券取引所で株式の取引がなされていない公開有限会社、信託、非営利団体、リミテッド・パートナーシップ、リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ、個人投資会社などがある。企業事業体の場合、その最終的な真の受益者や実質的支配者が特定しにくいことがあるため、マネー・ローンダリングに悪用されやすい。

     

    コルレス・バンキング (Correspondent Banking)

    ある銀行(「コルレス銀行」)から別の銀行(「コルレス先銀行」)に銀行サービスを提供すること。国際的な大手銀行は、通常、世界中の何百という銀行に対してコルレス銀行としての役割を果たしている。コルレス先銀行に対して、キャッシュマネジメント(例えば、様々な通貨での利子付口座)、資金の国際電信送金、小切手交換決済(クリアリング)サービス、ペイヤブル・スルー口座、外国為替サービスなど、様々なサービスの提供が可能である。

     

    クレジット・カード (Credit Cards)

    商品やサービスの購入及びキャッシングで使用される、信用限度額が付与されたプラスチックのカード。カード保有者は、後日、クレジット利用額の返済を発行者から請求される。犯罪収益によりクレジット利用額の返済が行われる場合、クレジット・カードがマネー・ローンダリングに悪用されている可能性もある。

     

    犯罪収益 (Criminal Proceeds)

    犯罪に加担することで、直接又は間接的に取得した資産。

     

    クロスボーダー(国境を越えた)(Cross Border)

    少なくとも2カ国以上の国家の間で行われる活動の意味で使われる。ある国から別の国への電信送金、国境を越えた通貨の持ち出しなどが、その例である。

     

    現金又は通貨 (Currency)

    交換媒体として流通している銀行紙幣や硬貨。

     

    現金密輸 (Currency Smuggling)

    国境を越えて大量の現金を不正に移動させること。厳密な銀行秘密が徹底されておらず、為替管理やマネー・ローンダリング防止法の整備が不十分な国に持ち込まれる場合が多い。

     

    通貨取引報告 (Currency Transaction Report (CTR))

    一定の基準額を超える物理的な通貨取引を記録した報告書。1日に複数の通貨取引が行われ、その合計額が必要報告額を超える場合もCTRを提出する。米国を始め、複数の国において、CTRを政府当局にいつ提出すべきかを定めた要件が規定されている。

     

    資産保管機関 (Custodian)

    他人や他の組織のために、資産の管理、運用、保管に対する責任を負う銀行、金融機関、その他の団体。資産保管機関は、資産の盗難リスクや紛失リスクを最小他人や他の組織のために、資産の管理、運用、保管に対する責任を負う銀行、金融機関、その他の団体。資産保管機関は、資産の盗難リスクや紛失リスクを最小限に抑えることを目的に資産を保有しており、活発な資産の取引や売買は行わない。

     

    資産保管 (Custody)

    顧客の投資や資産を保管し、運用する行為、またはその権限。

     

    顧客管理 (Customer Due Diligence (CDD))

    マネー・ローンダリング防止の観点によるCDDとは、顧客が関与していると思われる取引の種類を、金融機関が比較的高い精度で予測できるようなポリシー、プラクティス、手続を定めるよう求めるものである。CDDには、顧客の身元確認だけではなく、通常の取引や予想される取引とは相容れない取引を特定できるよう、口座での取引におけるベースライン(基準線)を設定することも含まれる。

     

    D


    デビット・カード (Debit Card)

    口座保有者が既存口座から資金を引き落とすことができるカード。デビットカードは、何らかの支払いや購入の際に使用し、インターネットを始め、多様な場所で使用することができる。たいていの場合、キャッシュアウト(現金引き出し)サービスやATMでの引き出しにより、現金を移動することが可能である。

     

    指定された犯罪類型 (Designated Categories of Offense)

    マネー・ローンダリングの前提犯罪であるとFATFが指定した各種犯罪。特定の犯罪及びそれらの要素の定義を自国の法律に基づいて独自に行うことが、各国に対して認められている。ただし、どの犯罪がマネー・ローンダリングの起訴に結びつく前提犯罪となるかは明確にせず、あらゆる重大犯罪が前提犯罪になりうる、としているのみの国が多い。

     

    指定非金融業者及び職業専門家 (Designated Non-Financial Businesses and Professions)

    FATFは、非金融業者及び職業専門家にも適用すべき一定基準を提言している。以下はその具体的な業種である。

    • カジノ(インターネット・カジノを含む)。
    • 不動産業者。
    • 貴金属商及び宝石商。
    • 弁護士、公証人、その他独立法律専門家及び会計士。(この場合、依頼人に代わり、特定された任務の準備や遂行を担当する専門家を指す)。
    • 信託や企業関連のサービスプロバイダー(依頼人に代わり、特定された任務の準備や遂行を担当する)

     

    国内送金 (Domestic Transfer)

    送金金融機関と受取金融機関が同じ法域にある場合の電子資金決済。つまり、国内送金とは、全体として単一の法域の境界内のみで行われる一連の電信送金を指す。たとえ、その電信送金で使われる実際のシステムが、別の法域やオンライン上にあるとしてもそれは同じである。

     

    E


    東部及び南部アフリカ・マネー・ローンダリング対策グループ (Eastern and Southern African Anti-Money Laundering Group (ESAAMLG))

    アフリカの東部及び南部にある国々で構成されているFATF型地域体。1999年発足。

     

    資金情報機関で構成されるエグモント・グループ (Egmont Group of Financial Intelligence Units)

    各国の国家金融インテリジェンス機関(FIU)が多数参加するエグモント・グループは、定期的に開かれる会合において、FIUの発展を促進する手段や情報交換、研修、専門知識の共有に重点を置いた協力体制を検討している。当グループの目的は、FIUに公開討論の場を提供し、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与防止における協力関係を強化し、各国内で当分野のプログラム実施を促進することである。

     

    電子資金決済 (Electronic Funds Transfer (EFT))

    金融機関の間で行われる電子的な資金移動を指す。最も普及している電子資金決済システムは、FedWire(米国連邦準備制度による銀行間のオンライン資金決済システム)とCHIPS(ニューヨーク手形交換所に加盟する銀行間のオンライン資金決済システム)の2つである。(SWIFTも第3のEFTシステムと言われることがよくあるが、実際は、金融機関の間で電信送金の指示を伝えるための国際的なメッセージングシステムであり、電信送金システムそのものではない)。

     

    電子マネー(E-マネー)(Electronic Money (E-Money))

    Eキャッシュとも呼ばれ、表記された貨幣価値を有し、オンライン上、機器のハードディスク内、プラスチック製カードのマイクロチップ内などの何らかの電子フォーマット上で電子的に保管されている。

     

    強化された顧客管理措置 (Enhanced Due Diligence (EDD))

    EDDには、顧客管理(CDD)と併せて、リスクの高い顧客がもたらすリスクの特定とその緩和を目的とした追加的措置が要求される。EDDの場合、その対象となる顧客の性質及びその事業について、標準的リスクや低リスクの顧客よりも徹底的に理解する必要があり、また、その口座の取引活動も詳細に把握する必要がある。金融機関においては、口座のプロフィールを最新の状態に保ち、リスクベースのモニタリングを徹底して行うべきである。

     

    マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策ユーラシア・グループ (Eurasian Group on Combating Money Laundering and Financing of Terrorism (EAG))

    2004年10月にモスクワで設立されたFATF型地域体。

     

    欧州連合 (European Union (EU))

    現在のEUは、1992年に調印、1993年に発効された「欧州連合に関するマーストリヒト条約」により設立されたものである。EUは政治経済に関する統合体であり、主にヨーロッパに位置する国家が加盟している。加盟国は、設置した3つの共通機構(欧州議会、欧州委員会、欧州連合理事会)に自らの主権の一部を委譲することにより、集団的利益が含まれる特定の問題に対して、欧州全体としての観点から民主的な判断を下せるようにしている。それゆえ、人、商品、サービス、通貨の自由な移動がEU全体で可能となっている。

     

    マネー・ローンダリング及びテロ資金供与を目的とした金融システムの利用防止に関するEU指令 (European Union Directive on Prevention of the Use of the Financial System for the Purpose of Money Laundering and Terrorist Financing)

    1991年6月に欧州連合(EU)により初めて採択され、1997年、2005年、2015年と2018年に改訂された本指令は、EU加盟国にマネー・ローンダリング及びテロ資金供与の防止の徹底とそのリスク管理を求めるものである。本指令の対象事業者は、金融機関のみならず、会計士、公証人、信託会社、不動産業者、税務アドバイザー、美術商、仮想通貨交換業者や賭博サービス提供業者など、広範囲に及んでいる。加盟国は、特に顧客管理、新たなリスクや遵守不履行の結果に関するいくつかの分野において本指令基準を実施すべきことがを求められている。

     

    欧州刑事警察機構(ユーロポール)(Europol)

    欧州刑事警察機構(ユーロポール)は、EUの法執行機関である。その主な目的は、全てのEU市民の利益のためにヨーロッパの安全性の向上を支援することである。マネー・ローンダリング防止に関しては、加盟国の法執行機関に対して、ELO(欧州刑事警察機構(ユーロポール)連絡官)や分析官を介しての業務支援や分析支援を行ったり、最新のデータベースや連絡手段を提供したりしている。

     

    明示信託 (Express Trust)

    委託者により明示的に設定される信託。通常、信託証書などの文書形式を取る。明示信託は、信託を設定する委託者の明確な意図や判断によらずに設定される信託(例えば、未申告資産の処理のため、裁判所により設定される法定信託など)とは異なる。

     

    引渡し (Extradition)

    引渡し条項を規定した合意のもと、容疑者や有罪判決を受けた者をある法域から別の法域へ引き渡すこと。

     

    域外適用 (Extraterritorial Reach)

    国のポリシーや法律を、他国の国民や組織に対して拡大して適用すること。法域の中には、マネー・ローンダリングに関する法律により、禁止条項や制裁条項を他の法域に拡大して適用する場合もある。

     

    F


    金融活動作業部会 (Financial Action Task Force (FATF))

    FATFは1989年、G-7により、国家及び世界レベルでのマネー・ローンダリング防止対策の確立を促進するために設立された。マネー・ローンダリング防止に関する基準やテロ資金供与への対抗策などを世界規模で設定する国際的な政策立案機関である。FATFの勧告は法的強制力を持たない。35カ国と2つの国際組織が加盟している。2012年、FATFはその「40 + 9の勧告」を大幅に改訂し、「40の勧告」に集約した。さらに、マネー・ローンダリングやテロ資金供与に関する最新の動向や手口を紹介する犯罪類型報告書を毎年作成している。www.fatf-gafi.orgを参照。

     

    ラテンアメリカ地域マネー・ローンダリング対策金融活動作業部会 (Financial Action Task Force on Money Laundering in Latin America (GAFILAT))

    2000年にラテンアメリカ地域を対象に設立されたFATF型地域体。

     

    FATF型地域体 (Financial Action Task Force-Style Regional Body (FSRB))

    FSRBは、FATFと類似した形式や機能を有している。ただし、その取組みは各地域に限定して行われる。FATFと併せて、マネー・ローンダリングやテロ資金供与に対抗するためのグローバルな提携ネットワークを構築している。

     

    資金情報機関  (Financial Intelligence Unit (FIU))

    疑わしい取引に関して提供された情報の受理、分析、関係当局への伝達に対して責任を有する、国家の中央機関。

     

    没収 (Forfeiture)

    法的措置により、財産や資産を強制的に喪失させること。一般的に、その財産の所有者が法律違反を犯している場合や、その財産が何らかの犯罪活動に関連している場合に取られる措置である。

     

    凍結 (Freeze)

    資産の交換、引き出し、清算、使用に対して、あるいは銀行口座の使用に対して、禁止又は制限すること。没収とは異なり、凍結された財産、機器、資金、その他資産は、凍結時点でそれらの所有権を有する自然人又は法人に帰属し続ける。第三者により、それらの管理が継続される場合もある。裁判所は、資産の流出を防ぐ手段として、凍結の実施を決定する場合もある。

     

    フロント企業 (Front Company)

    別の組織が設立し、管理する事業体。犯罪者は、必ずしも不正とは言えない形式でフロント企業を利用し、資金の出所が合法的であるかのように見せかけることでマネー・ローンダリングを行う。フロント企業が資金的に援助を行うことで、市場価格をはるかに下回る価格、時には製造コストにも満たない価格の商品やサービスの提供が可能になる。

     

    G


    南米金融活動作業部会 (GAFISUD (Spanish: Grupo de Acción Financiera de Sudamérica))

    ラテンアメリカ地域マネー・ローンダリング対策金融活動作業部会を参照。

     

    ゲートキーパー (Gatekeepers)

    弁護士、公証人、会計士、投資アドバイザー、信託や企業関連のサービス・プロバイダーなど、資金移動に関する取引を支援する職業専門家。マネー・ローンダリングの特定、防止、報告において特別な役割を果たすと考えられている。国によっては、金融機関と同等の適正評価の義務をゲートキーパーに対して課している場合もある。

     

    譲与者 (Grantor)

    財産や資産の権原又は所有権を譲渡する者。信託においては、通常、信託の設定者や資金提供者のことである。

     

    湾岸協力理事会 (Gulf Cooperation Council (GCC))

    産業と経済の分野での加盟国間の協力推進を目的として、1981年に設立された。加盟国には、クウェート、バーレーン、カタール、サウジアラビア、オマーン、そしてアラブ首長国連邦が含まれている。GCCはFATFの加盟機関であるが、GCCの各加盟国はFATFに加盟していない。

     

    H


    ハワラ (Hawala)

    中東、北アフリカ、インド亜大陸で一般的に利用されている非公式な価値移転システム。このシステムは伝統的に認められている銀行システムの外部で運営されている。基本的な形態は、顧客がまず「ハワラダール(ハワラ業者)」に連絡をし、送金したい資金をそのハワラダールに預ける。ハワラダールは、送金先の居住地にいる別のハワラダールに連絡をし、その別のハワラダールが送金先に送金をする。取引中の内容は、正味金額について貸借関係にあるハワラダール間で記録されている。代替的送金システムを参照。

     

    ハワラダール (Hawaladar)

    ハワラの仲介業者。

     

    密入国 (Human Smuggling)

    密入国とは、いずれかの国の法律に違反する形で、国境を越えて人を入国させたり、自ら不法入国したりすることである。密入国は、他人の搾取よりも、人の入国や移送に重点が置かれているという点で人身売買とは異なっている。

     

    人身売買 (Human Trafficking)

    「人身取引」とも言われる。人間を売買することであり、その目的の多くは性奴隷、強制労働、商業的な性的搾取である。人身売買は世界中のほぼすべての国で発生しており、組織犯罪としては世界第2の規模であるとしばしば言われている。

     

    I


    非公式な価値移転システム (Informal Value Transfer System (IVTS))

    代替的送金システムを参照

     

    インテグレイション (Integration)

    インテグレイション段階とは、伝統的なマネー・ローンダリングプロセスの第3段階、すなわち最終段階とされており、洗浄した資金を金融システム内に再び入れて、その資金が合法的であるかのように偽装を行うことで、その資金を経済活動に還流させる段階である。

     

    国際事業会社 (International Business Company (IBC))

    オフショアにある様々な企業構造を指し、その主な事業が会社を設立した法域以外で行なわれる。その特徴は、迅速な設立、機密性、広範な権限、低コスト、低率課税又は非課税、最小限の申告及び報告義務である。

     

    国際通貨基金 (International Monetary Fund (IMF))

    180を超える加盟国で構成されるIMFは、グローバルな金融協力の育成、金融の安定化、国際貿易の推進、高水準の雇用や持続的な経済成長の促進、貧困の削減などを世界レベルで達成するために活動している。設立以来、その目的は不変である。ただし、監視、財政援助、技術支援など、その業務内容は、加盟国の変化するニーズに対応して調整されている。

     

    J


    現在用語はありません。

     

    K


    認識 (Knowledge)

    ここでは、禁止行為に対して生じる心的状態のこと。2012年度版FATF「40の勧告」は、その第3勧告に付した「解釈ノート」において、マネー・ローンダリング罪の立証に必要な「故意」と「認識」の基準は、かかる心的状態は客観的な事実背景から推認できるという見解を示したウィーン条約やパレルモ条約が定める基準と一致させるよう、加盟国が徹底することを求めている。マネー・ローンダリング防止法令に付随する「認識」について、その厳密な定義は各国で異なる。「意図的な無関心」(Willful Blindness)も状況によっては「認識」に含むと見なされる場合もある。なお、「意図的な無関心」とは、いくつかの裁判所で定義されているように「事実の認識を故意に避けること」である。

     

    顧客確認 (Know Your Customer (KYC))

    顧客の正確な身元確認、「通常かつ想定される」取引タイプの決定のほか、特定の顧客の「不自然な」取引活動を検知するために使われるマネー・ローンダリング防止のためのポリシー及び手続のこと。

     

    従業者確認 (Know Your Employee (KYE))

    企業の従業員に対する認識や理解を深め、その従業員による利益相反、マネー・ローンダリング行為、犯罪歴、疑わしい取引などを検知する目的で使われるマネー・ローンダリング防止対策のためのポリシー及び手続のこと。

     

    L


    レイヤリング (Layering)

    伝統的に3段階に分けられるマネー・ローンダリングプロセスの第2段階で、プレイスメントとインテグレイションの間に位置するレイヤリングとは、監査証跡を隠蔽し、匿名性を持たせることを意図した何層もの複雑な金融取引を行うことで、犯罪収益をその源泉から遠ざけていくことである。

     

    法務リスク (Legal Risk)

    2001年にバーゼル委員会が発表した「銀行のための顧客管理文書」(Customer Due Diligence for Banks Paper)によると、法務リスクとは、訴訟、不利な判決、法的強制力がない契約が金融機関に混乱や損害を与える可能性と定義されている。さらに、銀行は政府当局から課される行政処分や刑事処分を負う可能性がある。銀行が訴訟事件に関係する場合、単なる訴訟費用以上に深刻な意味をその金融機関にもたらす場合がある。顧客の身元確認、マネー・ローンダリングに対する自らのエクスポージャー(リスクの度合い)の理解と管理について、これらに関する適正評価を銀行が怠る場合、銀行はかかる法務リスクから自身を効果的に守ることはできない。

     

    信用状(L/C) (Letter of Credit)

    一定の条件が満たされる場合、銀行が顧客の代わりに第三者への支払いを保証する信用供与の手段であり、銀行によって発行される。

     

    嘱託書  (Letter Rogatory)

    嘱託書(Commission Rogatoire)を参照

    M


    覚書 (Memorandum of Understanding (MOU))

    両当事者間で結ばれる合意であり、ある特定事項についてお互いの関係を規定する一連の原則を定めるもの。MOUは、国際的な財産没収事件における各国間の財産配分を管理したり、マネー・ローンダリング防止対策の取り組みにおける各国の義務を設定したりする際に、各国間でよく使用される。国家金融インテリジェンス機関(FIU)は、警察機関や税関当局と密接な関係を維持しつつ、継続的に疑わしい取引の届出の受領及びその分析を任務としている。その調査においては非公式な情報共有を行い、それは通常、MOUに基づき行われている。

     

    中東及び北アフリカ金融活動作業部会 (Middle East and North Africa Financial Action Task Force (MENAFATF))

    2004年に中東及び北アフリカ地域を対象に設立されたFATF型地域体。

     

    通貨代替物 (Monetary Instruments)

    トラベラーズ・チェックや各種の流通証券。個人小切手、業務用小切手、銀行小切手、自己宛小切手、約束手形、マネー・オーダー、無記名式の証券や株券などを含む。通貨代替物は、多くの国で通貨と同様にマネー・ローンダリング防止対策における規制の対象となっており、金融機関の顧客が通貨代替物に関する取引を行う場合、金融機関はその届出を提出し、さらにその記録を保持しなくてはならない。

     

    マネー・ローンダリング (Money Laundering)

    違法に得た資産や資金に関して、その存在、出所、移動、行先、不正使用を合法的なものに見せかけるために行う一連の隠蔽行為や偽装行為。通常、資金を金融システムに組み込む「プレイスメント」、何層もの取引により、その資金の出所、所有権、所在を隠蔽する「レイヤリング」、その資金を合法的な形に見せかけて社会に戻す「インテグレイション」の3つの段階に分かれる。マネー・ローンダリングは、それを犯罪と認める国ごとに様々な定義が行われている。

     

    マネー・ローンダリング報告担当者 (Money Laundering Reporting Officer (MLRO))

    様々な国際ルールで使われている用語で、企業のマネー・ローンダリング防止のための活動やプログラムを監視すること、疑わしい取引の届出を各国のFIUに提出することに対して責任を負う人物を指す。MLROは、マネー・ローンダリング防止に関する戦略及びポリシーを実施するためのキーパーソンである。

     

    マネー・オーダー (Money Order)

    少額の現金(一般的に500ユーロ又は500米ドル未満)で購入される通貨代替物。通常、当座預金口座を持たない人による請求書の支払いや、個人小切手を受け付けない業者への購入代金支払いの際に使われる。マネー・オーダーは、個人の口座ではなく、その発行機関から振り出されるため、マネー・ローンダリングの手口として使われることもある。

     

    マネー・サービス業者 (Money Services Business (MSB))

    以下のいずれかの活動を行う者(自然人、法人を問わない)で、規制上の適用基準値を超えるレベルの取引を行う者。なお、その場合、一般的にその者はAMLの義務を負う金融機関と見なされる。

    • 外国為替取引
    • 小切手換金
    • トラベラーズ・チェックやマネー・オーダーの発行や販売
    • プリペイド・アクセスの提供や販売
    • 送金

     

    送金サービス (Money Transfer Service or Value Transfer Service)

    ある場所で受領した現金や小切手、通貨代替物などのいわゆる価値貯蔵物を、通信、メッセージ、移転などの手段で、あるいはその送金サービス業者が属する決済ネットワークを介して、別の場所にいる受益者にその相当額を現金、その他の形で支払う金融サービス。送金サービスの取引では、複数の仲介業者が関わったり、最終支払いが第三者により行われたりする場合がある。送金サービスは、自然人又は法人により提供されるものであり、公式には規制下にある金融システム(例えば銀行口座)を通して、非公式には非銀行金融機関や事業者、あるいは規制外のシステムを通して行われる。非公式の送金システムのことを、「代替的送金サービス」や「地下銀行(パラレルバンキング)システム」と呼んでいる法域もある。

     

    マネーバル (MONEYVAL)

    欧州評議会マネー・ローンダリング対策評価専門家委員会。この委員会は、欧州評議会の加盟国のうち、FATFに非加盟である国で実施されているマネー・ローンダリング防止対策の自己評価や相互評価を行うことを目的に、1997年に欧州評議会閣僚委員会によって設立されたもので、当初は欧州会議特別委員会(PC-R-EV)という名称だった。マネーバル(MONEYVAL)は、欧州評議会の犯罪問題委員会(CDPC)の小委員会である。

     

    モニタリング (Monitoring)

    金融機関で行われるマネー・ローンダリング防止プログラムの構成要素の1つ。顧客の取引のパターンや傾向に不自然な点や疑わしい点はないか、通常のパターンとかけ離れた取引はないか点検するものである。取引のモニタリングでは、顧客の取引活動と、その顧客に設定された「通常かつ想定される」しきい値とを比較検討するソフトウェアを使うことが多い。

     

    刑事共助条約 (Mutual Legal Assistance Treaty (MLAT))

    国家間の合意であり、公式な捜査や訴訟での使用を目的に、それぞれの国や公共・民間部門における、法的手続に関する相互支援、書類や証人などの法的又は司法的資源の利用に関する相互支援を認めるもの。

     

    N


    ネスティング (Nesting)

    コルレス先銀行が、さらに別の金融機関へ川下の位置付けとなるコルレスサービスを提供し、かかる取引を自行のコルレス口座で処理すること。この場合、コルレス銀行は、結果として自身では顧客の適正評価を実施していない金融機関向けの取引を処理していることになる。これは、コルレス・バンキングでは一般的な側面である。しかし、コルレス銀行は、コルレス先銀行のAMLプログラムに対して、より詳細な顧客の適正評価を実施し、顧客のそのまた顧客の取引の処理に係るリスクも適切に緩和する必要がある。

     

    非政府組織 (Non-Governmental Organization (NGO))

    特定の国の政府に直接的には属していない非営利団体。市民の懸念事項を政府に届けたり、訴訟を提唱したり、政治参加を促進したりといったさまざまな活動を行い、人道主義的な機能を果たしている。一部の国のNGOに関するマネー・ローンダリング防止対策の法規制には、未だに抜け穴があるため、密かに資金移動を企むテロリストやテロ支持者によって悪用されることが懸念されている。

     

    非営利団体 (Non-Profit Organizations (NPO))

    非営利団体の形式は、法域や法制度によって様々であり、組合、財団法人、寄付団体、地域奉仕団体、公益法人、有限責任会社、公共慈善協会などの形式で存在している。各当局は、慈善、宗教、文化、教育、社会福祉、友愛などを目的として募金や支出を行う組織が、テロ資金の提供者に悪用されないよう取り組んでおり、FATFは、かかる当局を支援するための実践例を提示している。

     

    O


    オフショア (Offshore)

    字義的には、母国から離れている状態のこと。例えば、ヨーロッパ在住者にとって、米国は「オフショア」である。ただし、マネー・ローンダリングの文脈でのオフショアとは、低率課税や非課税、銀行秘密に関する厳格な法規定ゆえに、外国投資を誘いやすいと考えられる法域を指す。

     

    オフショア銀行免許 (Offshore Banking License)

    免許の条件として、銀行は、現地の居住者との取引や現地通貨での取引が禁止されている。

     

    オフショア金融センター(Offshore Financial Center (OFC))

    ある法域に物理的、あるいは法的に存在しているが、その業務地域が「オフショア」、つまり法域外に限定されている銀行や貿易会社などの各種企業や法人組織(「オフショア」を参照)に対してサービスを提供したり、その促進を図ったりする機関(オフショアを参照)。歴史的にOFCは、米国や欧州の主要金融センターに適度に近接したカリブ海や地中海諸国に設立されている。

     

    オムニバス口座 (Omnibus Account)

    クリアリング口座参照。

     

    オペレーショナル・リスク (Operational Risk)

    内部のプロセス、人員、システムなどの不備や欠陥、あるいは外的要因により、業務活動が損害を受ける直接又は間接的なリスク。オペレーショナル・リスクを正しく管理できていないと公に認識された銀行の場合、その業務に支障又は損害が生じる可能性がある。

     

    経済協力開発機構 (Organization for Economic Cooperation and Development (OECD))

    国際経済に関わる経済開発問題において、各国政府を支援する国際機関。パリのOECD内にFATFの事務局が設置されている。

     

    全米麻薬濫用取締委員会 (CICAD (Comisión Interamericana para el Control del Abuso de Drogas or Inter-American Drug Abuse Control Commission))

    CICADは、1992年に発表された「米州機構(OAS)モデル規制」の改正版をはじめ、マネー・ローンダリング防止に関する複数の勧告を発表している。

     

    依頼人 (Originator)

    口座保有者、あるいは口座を持たない自然人又は法人で、金融機関に対して電信送金を依頼する者。

     

    P


    ペイヤブル・スルー口座 (Payable Through Account)

    外国金融機関が(国内の)預貯金取扱金融機関に開設する取引口座の一形態で、当該外国金融機関の顧客は、その口座の資金に対する直接の管理者であるかのように、その口座を通して直接的に(あるいはそのサブ口座を通して)金融活動や銀行取引を行うことができる。PTAの実質的な利用者である外国金融機関の顧客に、適正評価を実施することは困難であるため、かかる口座を維持する預貯金取扱金融機関はリスクを負うことになる。

     

    物理的な存在 (Physical Presence)

    実在する所在国で、実質的な経営を行っている組織として、ある国に物理的に存在していること。かかる組織は、営業記録を保有し、監督者が存在する。現地の代理人や実務レベルのスタッフを置くだけでは、物理的に存在しているとは言えない。

     

    プレイスメント (Placement)

    マネー・ローンダリング・プロセスの最初の段階で、非合法な活動から得た収益を物理的に処理すること。

     

    重要な公的地位を有する者 (Politically Exposed Person (PEP))

    2012年に改訂されたFATFの「40の勧告」によると、PEPとは、外国で重要な公職に任じられた個人を指す。例えば、国家元首、有力政治家、政府高官、司法高官、軍高官、公営企業の幹部、主要政党の幹部などを指し、さらにその親族及び密接な関係にある者も含まれる。ただし、これらの分野でも中程度の地位にある個人の場合は、PEPに含まれない。PEPの定義は各国の法規制で異なり、外国の人物だけではなく自国の人物にも適用する国もある。

     

    ポンジー・スキーム(ねずみ講の一種)(Ponzi Scheme)

    マネー・ローンダリングの仕組みの一種で、チャールズ・ポンジー(Charles Ponzi)の名に由来する。イタリア移民のポンジーは、4万人から1,500万ドルを騙し取った詐欺により、米国で10年間の懲役刑を受けた。ポンジーの名は、新たな出資者からの資金をそれ以前の出資者への支払いにあてる仕組みの代名詞となっている。ポンジー・スキームは、異常なほど魅力的な利回りで出資者をだまして出資させる投資詐欺、架空の投資スキームである。このスキームの運営者は、以前からの出資者への支払いを新たな出資者からの資金で工面することにより運用を続けることができるが、それもスキーム自体の重圧によりスキームが破綻するかスキームの設立人が残金を持ち逃げするかまでの時間の問題である。、

     

    前提犯罪 (Predicate Crimes)

    「特定違法行為」であり、その収益が対象の取引に関わっている場合、マネー・ローンダリングとして起訴される可能性がある。マネー・ローンダリング防止に関する法律のほとんどにおいて、そのような根拠となる犯罪について、広範な定義や具体的なリストが示されている。前提犯罪を、重罪もしくは「刑法に抵触するすべての行為」と定義している場合もある。

     

    プライベート・バンキング (Private Banking)

    金融機関において、個人の富裕層を対象にハイエンドなサービスを提供する部門。プライベート・バンキングでの取引は、機密性、受益所有権に関する複雑な仕組み、オフショア投資ビークル、タックスシェルター(租税回避行為)、与信供与サービスなどを特徴とする傾向がある。

     

    個人投資会社 (Private Investment Company (PIC))

    「私有投資会社(Personal Investment Company)」とも呼ばれる。会社のオーナーのプライバシーを保護する厳格な秘密法を有するオフショア法域において設立されることが多い企業の一形態である。国際事業会社や免税会社を個人投資会社として見なす法域もある。

     

    ピラミッド・スキーム(ねずみ講)(Pyramid scheme)

    ポンジー・スキーム(ねずみ講の一種)を参照

     

    Q


    現在用語はありません。

     

    R


    レッド・フラッグ (Red Flag)

    潜在的に疑わしい状況、取引、活動であるものとして、注意を喚起する警告シグナル。

     

    監督機関 (Regulatory Agency)

    各種の金融機関に対する監督管理に責任を負う政府機関。監督機関は通常、その法域内にある金融機関に対して、規制の発令、検査の実施、罰金や罰則の適用、取引活動の制限のほか、場合によっては認可の取消を行う権限を有する。たいていの金融監督機関が、マネー・ローンダリングなどの金融犯罪の防止及び検知において主要な役割を果たしている。その多くは国内の金融機関に焦点を当てているが、海外の支店や海外での業務についても規制の対象にする力を持つ監督機関もある。

     

    送金サービス (Remittance Services)

    ジャイロ・ハウス(振替サービス)やカサ・デ・カンビオ(両替サービス)とも呼ばれ、預かった現金やその他の資金を、自らの金融システムを介して別の口座へ送金するサービスのこと。その送金先口座は、海外の法域に所在する関連企業内に開設されており、そこで最終的な受領者がその金額を受領する。

     

    風評リスク (Reputational Risk)

    金融機関の取引慣行や提携関係に関する悪評が、その正否にかかわらず、当該金融機関に対する信頼性をおとしめる可能性。銀行、その他の金融機関は、顧客による違法な行為の手段や被害者となりえるため、特に風評リスクにさらされやすい。このような場合に対して、金融機関は、顧客確認(KYC)プログラムや従業者確認(KYE)プログラムを通して、自らを守ることが可能である。

     

    コルレス先銀行 (Respondent Bank)

    別の金融機関に、コルレス口座の開設、維持、運営、管理を行ってもらっている銀行。

     

    リスクベース・アプローチ (Risk-Based Approach)

    異なるタイプの業種、顧客、口座、取引に関連する様々なリスクを評価すること。その目的は、マネー・ローンダリング防止プログラムの効果を最大にすることである。

     

    S


    セーフ・ハーバー (Safe Harbor)

    金融機関及びその取締役、経営幹部、従業員のための、刑事上又は民事上の責任に対する法的保護。契約で定められていたり、あるいは、立法上、規制上、行政上の禁止事項として定められたりしている情報開示の制限に違反する場合でも、当該金融機関が、資金情報機関(FIU)に対して、疑わしい取引などを誠実に報告する場合、当該金融機関はセーフ・ハーバーにより保護される。なお、これは当該金融機関が、根拠となっている犯罪行為が何であるか正確に把握していなかった場合でも、また、違法行為が実際にあったかどうかにかかわらず適用される。

     

    差押え (Seize)

    資産の凍結と同じように、管轄当局や裁判所が発した命令に基づき、資金やその他の資産の送金、交換、譲渡、移動を禁じること。ただし、差押えの場合、凍結と異なり、当局が当該資金又は資産を管理することができる。差押えられた資産は、差押え時点でそれらの所有権を有していた個人又は法人に帰属し続ける。ただし、多くの場合、当局がその差押え資産の所有、運営、管理を行う。

     

    外国の政治的に影響力のある人物 (Senior Foreign Political Figure)

    米国の用語で、外国の重要な公的地位を有する者(PEP)を指す。重要な公的地位を有する者(PEP)を参照。

     

    委託者 (Settlors)

    信託証書により、自らの資産の所有権を受託者に委譲する個人もしくは企業。受託者が信託資産の投資や分配に対して一定の裁量権を持つ場合、委託者が当該資産をどのように処分したいかについて示した、法的拘束力を持たない書面を信託証書に付随させる場合もある。

     

    シェル・バンク (Shell Bank)

    書類のみの存在であり、法人登記や設立許可を取得した国において、物理的に存在しない銀行。また、適格な規制下で、連結ベースの効果的な監督の対象である金融サービスグループに属していない。

     

    スマーフィング (Smurfing)

    マネー・ローンダリングでよく用いられるスマーフィングとは、現金預金をしたり、通貨代替物や銀行為替手形を購入したりする際、報告基準額を超えないよう、取引を複数回に分けて行ったり、複数の個人で行ったりする手口。このような取引を行うために雇われる者は「スマーフ」と呼ばれる。ストラクチャリングを参照。

     

    おとり捜査 (Sting Operation)

    おとり捜査官が犯罪者を装ったり、場合によっては「フロント企業」に潜入したりして、容疑者、あるいは犯罪者であることが分かっている者の信頼を得て、情報を収集したり、犯罪行為の証拠を入手したりする捜査手法のこと。犯罪者の特定、犯罪組織への潜入及びマネー・ローンダリングなどの犯罪による不正な資産の特定において効果的な手段である。

     

    ストラクチャリング (Structuring)

    通貨取引報告基準額を超えないようにする目的で、現金を小額に分けて、入金や出金を行ったり、あるいは通貨代替物を購入したりする違法な行為。この手口では、小口に分けた資金を複数回に分けて入金や出金を行うが、その取引の合計金額は小分けする前の金額と同額になる。マネー・ローンダラーは、金融機関の報告の対象にならないよう、ストラクチャリングを利用している。通貨取引報告が法律で義務付けられている法域において、この手口はよく使われる。スマーフィングを参照。

     

    召喚令状 (Subpoena)

    法的な手続のために証人の出頭を求める強制的な裁判所命令。証人は、特定の書類を持って出頭するように命じられる場合もある。この用語は、令状の受領者にかかる行為を強制する手続を指す場合もあるし、その書類自体を指す場合もある。

     

    疑わしい取引 (Suspicious Activity)

    顧客による不規則、又は不審な振る舞いや活動で、マネー・ローンダリングなどの犯罪行為やテロ資金供与に関わっている可能性のあるものを指す。あるいは、伝えられている顧客の合法的な事業、個人的な活動、もしくは類似の事業や口座において通常とされる活動と整合的でない取引活動を指す場合もある。

     

    疑わしい取引報告 (Suspicious Activity Report (SAR))

    疑わしい取引の届出(STR)を参照

     

    疑わしい取引の届出 (Suspicious Transaction Report (STR)) 

    届出機関に要求される政府当局への届出のことで、不審な取引に関する金融機関の口座情報に関する報告などが含まれる。多くの法域では、金融機関に対して、「疑わしい取引の届出」(STR)を扱う関連当局(FIUなど)に疑わしい取引を届け出ることを義務付けている。このSTRは、疑わしい取引報告(SAR)とも呼ばれる。

     

    T


    タックス・ヘイブン (Tax Haven)

    外国人投資家や預金者に対して、税務上の優遇措置や租税回避を提供する国々のこと。

     

    テロ資金供与 (Terrorist Financing)

    テロ行為の実行に必要な活動資金を、テロリストが調達するプロセス。テロ活動のための資金調達源は、主に2つある。1つは、国、組織、個人からの財政的支援である。もう1つは、収益を生むさまざまな活動であり、密輸やクレジット・カード詐欺などの不正な行為が含まれる。

     

    証言 (Testimony)

    証人による口頭の供述。通常は、証人の知るかぎりの事実を述べる、という宣誓のもとに行われる。

     

    ティッピング・オフ(顧客への情報漏洩)(Tipping Off)

    疑わしい取引の届出の対象や、当局の捜査又は調査の対象になっていることを、その容疑者本人に知らせる行為で、不正又は違法とされる。

     

    貿易金融 (Trade Finance)

    信用状(L/C)を参照

     

    トランスペアレンシー・インターナショナル (Transparency International (TI))

    ベルリンを拠点とする非政府組織で、政府の説明責任の向上や、国内外の汚職の抑制に取り組んでいる。1993年に設立されたTIは、現在、約100カ国で活動している。「汚職に関するニュース」を毎日ウェブサイトで公表するほか、汚職に関するニュース記事やレポートのアーカイブも提供している。TIの「腐敗に関するオンラインリサーチ及び情報システム」(Corruption Online Research and Information System:CORIS)は、全世界の汚職に関する情報を集めた、おそらく最も包括的なデータベースである。TIは、年に1度公表する「腐敗認識指数」(Corruption Perceptions Index:CPI)により最もよく知られている。これは、各国の政府職員がどの程度腐敗していると認識されるか、その度合いに基づいて国別にランキングしたものである。また、「賄賂指数」(Bribe Payers Index:BPI)は、主要輸出国の賄賂への依存性に基づき、主要輸出国をランキングしたものである。同じく、年に1度公表の「世界の腐敗レポート」(Global Corruption Report)は、上記のCPIとBPIを組み合わせたもので、汚職の全体的な水準によって、各国をランキングしている。これらのリストは、特定の法域におけるリスクを金融機関が判断する際に役立つものである。

     

    信託 (Trust)

    資産の所有者(譲与者/グランター)、受益者及び資産の管理者(受託者)の間で締結される契約。受託者は、譲与者が決めた契約条項に従って、受益者の利益のために資産の管理を行う。

     

    受託者 (Trustee)

    受託者になるのは、有償の専門家や法人、無償の個人などさまざまであるが、いずれも信託基金の資産と受託者自身の資産を分別して保管する。受託者は、委託者による信託証書に従い、さらに、何らかの要望書があればそれも考慮して、信託資産の投資や処分を行う。

     

    犯罪類型 (Typology)

    マネー・ローンダリングの手口を指し、FATFにより使用されている用語である。

     

    U


    最終的な真の受益者 (Ultimate Beneficial Owner (UBO))

    真の受益者を参照

     

    地下銀行 (Underground Banking)

    代替的送金システムを参照。

     

    国際連合 (United Nations (UN))

    1945年に51ヶ国により、相互協力及び集団安全保障による平和の維持を目的として設立された国際組織である。現在、世界のほぼ全ての国が国際連合に加盟している。ウィーン条約も参照のこと。国際連合は、組織的犯罪対策に取り組んでおり、「国連薬物統制犯罪防止事務所」の重要な施策である「反マネー・ローンダリングのグローバル・プログラム(GPML)」などを実施している。GPMLを通して、国際連合は、加盟国によるマネー・ローンダリング防止関連の法整備及びその撲滅のためのメカニズムの構築を支援している。GPMLの活動内容は、マネー・ローンダリング防止に関するポリシー構築の奨励、関連する問題及びその対応の監視と分析、マネー・ローンダリングに関する普及啓発、他の国際機関とのマネー・ローンダリング防止共同イニシアチブにおける調整役などである。

     

    国連安全保障理事会決議 第1373号(2001年)(UN Security Council Resolution 1373 (2001))

    2001年に採択されたこの決議は、テロ対策関連の法規制の制定及びその管理機構の設立を通して、加盟国が一連のテロ対策措置を講じることを要求している。さらにこの決議では、加盟国に対して「テロ資金供与やテロ活動支援に関連する犯罪捜査、あるいはその刑事手続において、各国は相互に最大限の協力を行うこと」も要求している。

     

    不自然な取引 (Unusual Transaction)

    報告義務を意図的に回避しているかのように思われる取引、その口座の取引パターンと一致しない取引、そのタイプの口座に通常想定される取引から逸脱した取引などを指す。

     

    米国愛国者法 (USA PATRIOT Act)

    正式名称は、「2001年テロリズムの阻止と防止を目的とした適正手段による米国強化団結法(公法107-56)」(The Uniting and Strengthening America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and Obstruct Terrorism Act of 2001(Public Law 107-56))である。2001年10月26日に制定されたこの法律は、銀行秘密法への50項目以上の改正が含まれるなど、マネー・ローンダリング防止の分野に重大な変化をもたらした米国の歴史的な法律である。愛国者法の第3章「2001年国際マネー・ローンダリング阻止およびテロ資金供与防止法」(The International Money Laundering Abatement and Anti-Terrorist Financing Act of 2001)には、本法律におけるマネー・ローンダリング防止関連条項のほとんどが含まれている。

     

    V


    価値移転(送金)サービス (Value Transfer Service)

    送金サービスを参照。

     

    ウィーン条約 (Vienna Convention)

    1988年に採択された「麻薬及び向精神薬の不正取引防止条約」(Convention against the Illicit Trade in Narcotic Drugs and Psychotropic Substances)を指す。このウィーン条約の加盟国には、麻薬密売やそれに関連するマネー・ローンダリング活動を犯罪行為として規定すること及び麻薬密売の収益に関する没収制度を法制化することが義務付けられている。この条約の第3条には、マネー・ローンダリングに関する包括的な定義が示されており、それ以降に制定された各国の法律の多くは、これに基づいたものになっている。

     

    仮想通貨 (Virtual Currency)

    デジタル空間で取引される交換媒介物であり、通常、法定通貨(例:政府発行の通貨)に交換したり、実際の現金として代用したりすることが可能である。

     

     

    W


    意図的な無関心(Willful Blindness)

    米国におけるマネー・ローンダリング事件に適用される法律上の原則であり、裁判所では「事実の認識を故意に避けること」、「目的のある無関心」などと定義されている。裁判所は意図的な無関心(Willful Blindness)を、資金の出所の違法性やマネー・ローンダリング取引に関わる顧客の意図の実質的な事実認識と同等に扱う。

     

    電信送金 (Wire Transfer)

    金融機関が、顧客に代わり、又は金融機関自身の理由により、金融機関の間で資金を電子的に移動すること。電信送金は、マネー・ローンダリング防止に取り組む多くの国で規制対象となっている資金移動手段である。

     

    ウォルフスバーグ・グループ (Wolfsberg Group)

    国際的な金融機関で構成される団体であり、第1回目の会合場所であるスイスのウォルフスバーグ城にちなんで名づけられた。構成メンバーは、サンタンデール銀行(Banco Santander)、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)、三菱東京UFJ銀行、バークレイズ(Barclays)、シティグループ(Citigroup)、クレディ・スイス・グループ(Credit Suisse Group)、ドイツ銀行(Deutsche Bank)、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)、HSBC、JPモルガン・チェース(J.P. Morgan Chase)、ソシエテ・ジェネラル(Société Générale)、スタンダードチャータード銀行(Standard Chartered Bank)、UBSである。2000年、これらの金融機関は、トランスペアレンシー・インターナショナル及び世界各国の専門家たちとともに、国際的なプライベート・バンクを対象としたマネー・ローンダリング防止ガイドラインを作成した。以来、ウォルフスバーグ・グループは、コルレス・バンキングやテロ資金供与などに関する複数のガイドラインを公表している。

     

    世界銀行 (World Bank)

    世界銀行は、発展途上国の財務及び技術支援において必要不可欠な役割を果たしている。一般的な銀行の概念とは異なり、184ヶ国の加盟国が所有する2つの特異な開発機関である国際復興開発銀行(IBRD)および国際開発協会(IDA)で構成されている。これらの開発機関は、発展途上国に対して、低金利の融資、無利息の貸付、補助金の提供を行っている。2002年、IMFと世界銀行は、各国のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与防止策を評価するために、12カ月におよぶ試験的なプログラムを実施した。また、世界銀行とIMFは、FATFと協力して、FATFの「40の勧告」に基づいた各国共通の評価方法を開発した。

     

     

    X


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    Y


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    Z


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